後継者を育てたい
後継者選択のポイント
1.後継者選びは事業承継の最大の課題
後継者選びは事業承継の最大の課題であるといえます。後継者が今後の会社のかじ取りを担うわけですから、後継者の選択の如何によって、その後の会社の行き着く先が決まってしまうと言っても過言ではありません。
後継者選びには、下記2通りの選択肢があります。
- 血族・親族から選ぶ
- 他人から選ぶ
2.後継者を血族・親族から選ぶ場合
(1)息子・娘を後継者として選ぶ場合
中小企業の場合まず後継者の候補となるのは、経営者の息子・娘です。中小企業庁の調べによると、中小企業の約7割において、息子・娘に事業承継がなされていることが分かります。経営者の子供に事業承継を行うメリットとしては、下記のことがらが挙げられます。
各種関係者からの理解を得やすい
ただし、息子・娘に兄弟姉妹がいる場合には、後継者とならない子どもに対する配慮が必要です。
後継者とならない子供も会社役員にするのか、また株式や事業用資産以外の財産を相続させるかなどを検討しなければなりません。
また、最近は、息子・娘が「自分のやりたい仕事をやるので、後継者にはなりたくない」と考える傾向も多いようです。
そのため、経営者が息子・娘を後継者にしようと考えているのであれば、早い段階で、息子・娘に対して、後継者になることについての意思確認を行う必要があります。
(2)息子・娘以外の親族
社長の息子や娘に、後継者になる意思がない場合、次に後継者の候補として考えられるのは、息子・娘以外の親族です。
これには娘婿を後継者にするケースや、甥を後継者にするケースも多く見られます。
また、社長の兄弟姉妹を後継者とするケースも少なくありません。社長に兄弟姉妹がいる場合には、兄弟姉妹がその会社の役員に就任していることが多くあるからです。
3.後継者を血族・親族以外から選ぶ場合
(1)共同経営者や優秀な役員・従業員から選ぶ
親族に後継者がいない場合には、共同経営者や社内の優秀な役員・従業員が後継者候補となります。
特に、会社が大きくなればなるほど、親族間で事業承継を行うのではなく、「血がつながっていなくとも、経営能力がありそうだ」という理由から、共同経営者や社内の優秀な役員・従業員を後継者にする傾向が見られます。
ここでは、下記の点に注意する必要があります。
社内の優秀な役員・従業員は、役員・従業員として業務を執行する面では優秀かもしれないが、必ずしも、経営能力に優れているとは限らない
また、社内の優秀な役員・従業員を後継者にする場合には、経営者・オーナーからその役員・従業員への株式・事業用資産の譲渡に問題が生じることがあります。
役員・従業員は、経営能力は優秀かもしれませんが、多くの場合、経営者・オーナーから株式・事業用資産を譲受するだけの資金を持っていません。
そのため、この場合には、役員・従業員が事業承継・経営承継に際して、株式・事業用資産を譲受するための資金を準備しなければならないという配慮が必要です。
(2)外部からの招聘
親族にも社内にも後継者の候補者がいない場合には、メインバンクなどの金融機関から人材の紹介を受ける、取引先から人材を抜擢するなどの方法も考えられます。
そしてこの方法のメリットは下記になります。
社長が交代しても、メインバンクなどの金融機関や取引先との信頼関係を維持できる
しかしその反面、社内の役員・従業員からは「どこの誰だか知らない人の下では働けない」などと反発が生じる可能性があります。
4.後継者の選択は慎重に
後継者選びは、最重要の経営課題であるといえます。
したがって、決して過去の慣習や思い込み、また一時の感情や勢いで決断をしてはいけません。
冷静かつ慎重に後継者は選抜しなくてはなりません。
社長としてあるべき姿を伝える
事業承継時の社長の義務として、まずその帝王学の基礎ともいうべき「社長としてあるべき姿」を後継者に伝えることがあります。ここでは、下記の5点を、ビジネスの世界で生き残っていく上で最も重要なこととして確実に伝えなくてはなりません。
1.周囲をまとめるリーダーシップ
社長には強いリーダーシップが求められます。社長とは、人をひきつけ、引っ張っていく存在だからです。リーダーシップを発揮していくためには、次の5つ要素を意識して行動する必要があります。
- ミッション(任務)を明らかにする
- バリュー(行動で守るべきこと、守るべき価値)を明らかにする
- ビション(目標)を明らかにする
- ストラテジー(戦略と手段)を明らかにする
- ゴール(達成点)を明らかにする
一言でいえば、仕事をするうえでの方向性をはっきりと具体性を持って明示し、全体で共通の目的を持てるように導くこと、これがリーダーシップです。
仕事の方向性を明確に示すためには、上記の5つの要素を明確にして絶えず社員全員に共有する必要があります。
2.行動するうえでの主体性
行動するうえでの主体性は、常に下記の内容を念頭において行動することから生まれてくるものであるといえるでしょう。
社長として自分が今やるべきことは何か
会社経営において起こる様々な問題を、他者の責任とするのではなく、社長自身が主体となって知恵を出し行動することで社員の心もつかみ、会社も良い方向へと進んでいきます。
3.自社を客観的に見ることができる視点
社長には、自社を客観的に見ることができる視点が求められます。これは、次の要素をしっかりと理解できているということです。
- 自社が今どういう状況にいるのか
- 自社は何が強くて、何が弱いのか
(1)なぜ自社を客観視する心が必要であるのか
社長は会社の方向性の間違いを、それがまだ小さいうちに発見しなければなりません。問題が小さなうちなら、いくらでも対処の方法があるからです。そして、そのためには厳正に自社を客観評価することが求められます。内在する問題が小さければ小さいほど、自分では気づきにくいものであるからです。
(2)自社を客観的に見ることによる効果
社長が自社について、客観的に把握することは難しいでしょう。だからこそ、ここで「他者の意見を聞き入れる」ことが必要になるのです。他者の冷静な意見を真摯に受け止め、それを分析することによって自社を冷静に見つめることができるようになります。
自己が見つめたくはない現実を他者から指摘されても、そこにある問題点を冷静に分析し、修正していかなければなりません。
4.何事も謙虚に学ぼうとする意識
社長という存在は、通常は人にアドバイスを与える側であり、いわば「人からアドバイスを受ける」ことには慣れていないケースが多いです。しかも、長年経験を積んでくると、過信からさらに他者の意見を聞き入れることができなくなってしまいます。
しかし、冷静な第三者の意見とは、時に絶大な効力を発揮するものです。事業承継対策がまさにそうです。
したがって、後継者には、「慢心を起こす前に謙虚さを教える」ことが重要なのです。
5.周囲に対する感謝の気持ち
職務を遂行している社員に対し、「給料を払っているのだから当たり前」というような気持ちではなく、「職務をこなしてくれてありがとう」という気持ちをもって接することが重要です。
なぜならば、自分のこなしている職務を理解し、それに感謝の念を抱いてくれるような社長にこそ、社員は職務を通して尽くそうと思い、結果業績向上のための良い仕事をおこなってくれるのです。
社長の知識・ノウハウを
後継者に伝える
社長が退任した後、後継者は様々な問題に直面するものです。直面する問題を後継者が解決していくためには、社長としてできるだけの知識、ノウハウを後継者に伝えておかなければなりません。
社長が後継者に伝えるべき知識・ノウハウとは、次の通りとなります。
- 社長が経験した失敗例
- 人材の見極めるノウハウ
- 財務の健全化を実現する手法
1.失敗談を伝える
どんな凄腕の社長であっても、これまで「何一つ失敗をせずに、一つの間違いもなく順風満帆に経営を行ってきた」という人は誰もいないでしょう。
間違いや失敗を数多く経験し、人に騙され、そして自らの体験から学んで経営に対する感性を磨くことで経営力が身に付いてくるものです。
後継者には、長い年月と高い授業料を払って社長自身が身に付けた「失敗からの教訓」を伝承することが最も重要です。
2.人間の本質を見極めるノウハウ
(1)“社長の目”の有用性
社長として長く活動してくると実に様々な人々と接することになり、結果、幾多の失敗を繰り返しながら「人間の本質」を見極める眼力を備えることができるようになります。
この眼力をきちんと伝えておけば、後継者は先代社長がおかしてしまった過ちを繰りかえさなくて済むのです。そして、企業経営にはなくてはならない「人材」との接し方において、それをスムーズに進めるための大きな力を発揮します。
(2)社員の評価ポイントも伝承する
従業員の評価ポイントを、後継者には伝えておきます。
社員を評価する場合、良い点や得意なところを見るとともに、社員自身の問題点や努力すべき点等見極め方も同時に伝えていく必要があります。
3.財務の健全化を実現するノウハウの伝達
(1)使うときは使う
経費は、削るばかりではいけません。下記の内容には特に気を配り、金を使うか使わないかの判断をしなくてはなりません。例えば次のような意思決定は、積極的に行わなければならない場面も出てきます。
- 大型の設備投資の実施
- 事業効率を考えた会社施設の移動
- モチベーションアップのための昇給
- 社員教育のための教育訓練費の支出 等
上記の経費は将来的に会社を繁栄させる礎となるものであり、思い切って金を使うときは、使わなくてはなりません。
(2)金の使い方のノウハウ
金の使い方に関しては、その判断にコツが必要です。そしてこのコツとは、実際に成功や失敗を繰り返しながら覚えていくようなものであり、短期間に身に付くものではありません。
だからこそ、後継者が金の使い方に迷ったときの道しるべとして、また社長と同じ過ちを繰り返さないためにも、過去の経験の凝縮された「金の使い方のコツ」を教えておく必要があるのです。
後継者に「夢を創造する力」
を伝授する
社長には、当然に「社員を引っ張っていくためのスキル」が求められ、それが高いレベルにあればあるほど、会社の経営は上手くいきます。
したがって、後継者育成の段階では、「社長のスキル」を後継者に習得させなければなりません。
1.「夢」を創造する力を鍛える
(1)夢が未来のあるべき姿を示す
社長が語る夢とは、「企業目標」であり「年商○○億円を目指す」など明確に示されるケースが多くあります。
しかし認識しておかなければならないのは、この目標に対して「夢」を感じるのは社長だけであるということです。社員の興味はもっと別のところにあります。
事業承継は、次のことを決定することから始まります。
会社が儲かると、自分たちの生活と給料はどうなるのか
このようなポイントに社員は関心があるため、社長は「夢」を社員に語る際、下記のような言葉に置き換える必要があります。
○○のような夢をかなえることによって会社は豊かになり、社員の生活がXXできるだけ豊かになる
(2)深い自社理解が夢を創造する
後継者が夢をつくりあげるには、自社理解を深めることが必要になります。そしてそのためにはまず、「先代がどんな想いで経営をしてきたのか」を知ることが必要です。先代社長の想いを知るためには、下記の2点を実行することが有効です。
- 会社が歩んできた歴史を知る
会社の沿革をただ眺めるのではなく、「何故この場所に営業所を設立したのか」等、会社が起こしたアクションに対する理由を考えながらこれをみていくと、先代の考え方等を理解しやすくなります。 -
過去の財務諸表が夢の原点
過去の財務諸表を読むことは、次のような利点があります。
先代の「苦労の現実」を如実に知ることができ、モチベーションが上がる- 先代の苦労を知ることにより、先代に対する感謝の念が生まれます。そしてこれと自社理解が進むと、「自社に対する誇り」が生まれるのです。そして、これこそが「夢のスタート地点」となるのです。
- 他者の意見も取り入れ「夢」を共有化する
「社長の夢=自社の夢」は、作成して自己の中だけで完結させてしまうものではなく、「他者の意見も取り入れる」ことも必要になってきます。社員や友人に見せ、その感想をもらい、「夢」についてさらに思考を重ねることによって、「夢」は決して一人よがりなものではなく、「社員や社会貢献を実現するもの」へと進化していくのです。
後継者に「危機管理能力」
を伝授する
会社経営には、常に危機や問題が潜んでいます。後継者は、会社・社員を守るために、「危機管理能力」を身に付けなくてはなりません。
1.法律には浅く広くであっても精通する必要がある
企業を取り巻く法律の網目というものは予想以上に細かく、「業務が法の網に掛かってしまう」という状況も多くある、ということを認識しておかなければなりません。
しかし、法律に関する細かな知識は必要ありません。詳細については、専門家の意見を仰げばい良いだけの話です。社長に必要なのは、「業務の法律に対する違和感」を感じることです。法律に対するリスクは、その芽が小さなうちに対処するのが効果的です。
そこで重要になるのは、「法律に対する小さな違和感」を感じることです。どんなに僅かなものでも、違和感を察知することができれば、その段階で専門家に相談をすることができるのです。
後継者が「法律に対する違和感」を感じるためには、次の2点を実行していくことが必要です。
- 浅く広く法律を勉強する
- 日ごろから法律に対して関心を持つ
2.株式が持つ危険性を知る
中小企業の強みである「オーナー権限」を維持させるためにも、後継者には全株数の過半数を持たせることが必須になります。ここでは、株式に関する問題を回避するために、下記の点を実行することが必要になります。
後継者にとって大きなリスクとなる「株主構成に対するリスク」に関し、敏感になることが何よりも必要です。
- 株式名簿に後継者が知らない人間がいれば、自社とその人の関係をしっかりと伝えておく
- 名義株主にも注意を払わなければならない。実際には出資していない名義株主は、実質としては株主と同じ扱いになり、その株を買い取る際に、多額の出費を強いられてしまう場合がある。
株主非公開の中小企業においては、必ず社長が株式の過半数を持ち、経営的立場を確固たるものにすることを実行しなければなりません。
3.採用段階での社内リスク軽減策
自社の社員が起こす「金品の横領」や「社員同士の暴力トラブル」等の不祥事も当然に会社におけるリスクの一つであると位置づけることができます。しかし、これは事前の対策によってある程度軽減させることができるとも言えます。従業員の不祥事を防ぐには、採用の段階で人物をしっかりと見極めることです。以下が社内不祥事のリスクをできるだけ軽減させることのできる方策となります。
(1)人手が足りない時でも、採用の基準は下げてはならない
人手が足りないとき、「誰でもいいから」と採用をしてしまうと、後々大きな社内不祥事に繋がってしまう可能性があります。このリスクを軽減させるには、下記の内容を実行することが有用であると考えられます。
採用基準を明確にし、人がどうしても欲しい時であっても、採用基準を満たしていない人物は決して採用しない。
(2)社員の小さな変化も見逃さない
「社員の小さな変化をも見逃さない」姿勢が、社員の不祥事を防止する有効な手立てとなります。そして、以下がその「小さな変化」になります。
- 遅刻・欠勤が増えてはいないか
- 金遣いが荒くなり、また所持品に変化はないか
- 同僚から不穏な噂はたっていないか
- 勤務態度に変化はないか
これらは小さなことですが、これらのことに敏感に反応することが社内不祥事を未然に防ぐ重要なことになってくるのです。
4.毅然とした態度で不祥事へと対応する
社内不祥事に対し、社長がどのように対処するかということを、社員は注目しています。したがって、不祥事から逃げてしまってはいけません。そのような態度をとってしまったら、社員の心をつかむことなどできないのです。
社内不祥事は、幹部に任せるのではなく自らが出ていき、その裁定から生じる社長の価値観を示すことが重要なのです。
そして、社長が自分の価値観を明確に示すことにより、会社の文化や風土がつくられていくのです。
5.「法律の外にいる存在」からのリスクに対処する
(1)「法律の外にいる存在」の脅威を意識する
「法律の外にいる存在」からの攻撃、これには「恐喝・誹謗中傷」等が挙げられますが、会社にとって大きなリスクになります。これらのリスクを回避するためにも、下記の5点のポイントには気を配っておく必要があるでしょう。
- 日頃からの準備・心構えはできているか
- 地元警察とのコミュニケーションは取れているか
- 顧問弁護士とのコミュニケーションは取れているか
- 付け込まれるスキはないか
- 会社の年商や個人の年収を気軽に話してはいないか
日頃からの準備・心構えはできているか
事件が起こる可能性は自社にもある、という危機感を持つことが何よりも大切になってきます。「自社に限ってそのような事件に巻き込まれることはない」という意識は取り払わなくてはなりません。
地元警察とのコミュニケーションは取れているか
この分野の問題は、警察に相談しなくては解決できないことがほとんどになってきます。したがって、地元警察と日頃からコミュニケーションをとるように心がけ、気軽に何でも相談できる間柄になっておくのが良いでしょう。
顧問弁護士とのコミュニケーションは取れているか
顧問弁護士は、是非持っておいたほうが良いでしょう。このような「法律の外にいる存在」からの問題が発生した際には、顧問弁護士との連携が極めて重要になってきます。普段から、雑談レベルでも構いませんので、情報交換をしておくと良いでしょう。
付け込まれるスキはないか
これは脅迫に対するリスクを軽減するのに、最も有用な手法であるということができます。要は、「後ろめたいことはしない」ということです。
会社の年商や個人の年収を気軽に話してはいないか
脅迫や脅しをしてくるような存在は、当然に金のあるところに集まるものであり、金に対する情報の収集力は長けています。気軽な気持ちで会社の年収や個人の収入に関して話してはいないでしょうか。そんなちょっとした会話も、まわりまわって彼らの情報源となってしまうのです。
(2)弁護士の力を借りて「法律の外にいる存在」に対抗する
事件が発生したら、彼らの言い分を法律の枠組みの中に組み込んでしまうことが大切です。「法の外の存在」から「法の内の存在」へと変えてしまうのです。ここで、弁護士の力が必要になってくるのです。
後継者に会社を託す前に
社長がやっておかなくては
ならないこと
社長には、後継者にその座をバトンタッチする前に、やっておかなければならないことがあります。
これを実行することで、後継者の経営は円滑になり、問題に直面した際も柔軟に対処していくことが可能になります。
1.借金がいくらあるかは正確に伝える
社長は後継者に事業を継がせるのであれば、良い点ばかりを話すのではなく、当然にその悪い点である「負の財産」についてもしっかりと伝えてやらなくてはなりません。そして特に「借金・借入金」については、念入りにこれを説明しておかなくてはなりません。
(1)連帯保証人と担保について説明をする
連帯保証人については、下記の内容を説明しておかなければなりません。
どの借金に誰の連帯保証が入っているのか
連帯保証人については、下記の内容をきちんと説明しておかなければなりません。また、借入には担保も入っています。「どの借入にはどの担保が入っているのか」をリストにし、さらにその詳細まで説明できるようになっていると良いでしょう。また「信用保証協会付借入」がどれくらいあるのかをきちんと把握し、後継者に説明できるようになっておかなければなりません。
(2)伝えておくべき負の財産をリスト化する
借入金については、次の内容をリストにし、把握しておく必要性があります。
- いつ
- どの金融機関から
- いくら
- 金利何%で
- 返済はいつまでに
- どのような担保条件で
2.自分の右腕と親族の処遇をどうするか
(1)後継者と先代社長の右腕は反発しやすい
後継者が社長になった後、先代社長の右腕であった存在との確執は、多くの事業承継において問題になりやすいものです。
後継者は、先代のご意見番であった存在には、何かと気を遣い本音で話すことができないものです。そのため言いたいことをいえず、ストレスを溜めた社長は、経営においても賢明な判断ができなくなってしまいます。
また、先代の右腕であった存在は、自己が先代を支えてきたという自負心もあり、「後継者に張り合うことを許された存在」として認められているという感覚を持っています。
このような思考は、経営上の問題についても社長とぶつかってしまい、全社的な意志統一を図ることを阻害する要因となってしまいます。
(2)先代社長の右腕的存在は社長と一緒に引退させる
事業承継が実現し社長が変わったなら、できれば「先代の右腕」を一緒に退職させるべきでしょう。
一緒に引退することが難しい場合、期限を設けた退職勧告をすることが望まれます。期限を設けずに、後継者と先代の右腕が共存すると、権力の二重構造が続き、会社にとって決して良いことはありません。
(3)問題のある親族には、会社を辞めてもらう
中小企業では、社長の兄弟姉妹が働いていることも多いでしょう。この親族がきちんと働いていれば何の問題もありません。しかし、社長の兄弟姉妹が「非常勤役員」という形で働かずに給料をもらっているケースは多いものです。たしかに、社長の兄弟姉妹には、「創業初期、無給で仕事を手伝ってもらった」等、多岐にわたる恩義があることでしょう。しかし、後継者の代になってまでそれをやっていてはいけません。他の従業員に対する示しがつかず、モチベーションを下げる結果にも繋がってしまいます。
また、社長の兄弟姉妹が「仕事はしないが、口は出す」という有様ですと、企業経営自体が全く後継者の計画通りにいかなくなってしまいます。
したがって、後継者の代になったら、このような親族には辞めてもらわなければならず、その退職勧告を、社長がおこなっておくことが望まれるのです。