個人編 申告書からみた節税対策

小規模企業共済・
確定拠出年金で節税

小規模企業共済の活用

小規模企業共済に加入し、拠出した掛金は全額、小規模企業共済等掛金控除として所得控除することができます。(最高840,000円/年)
小規模共済に加入し、途中解約した場合であっても、掛金納付月数が240ヶ月を満たしていると、解約手当金が拠出掛金合計額を下回ることはありませんので、節税効果を加味した返戻率は100%を超えることになり、有利な制度です。

(1)小規模企業共済制度とは

小規模企業共済制度は、小規模企業共済法に基づく制度で、小規模企業の個人事業主や会社役員などが、事業の廃止や役員の退職などに備えて掛金を拠出する制度です。

(2)加入資格

商業またはサービス業を営む場合には、常時使用従業員数が5人以下、それ以外の業種では20人以下の個人事業主または会社役員が対象となります。

  • 加入後に従業員数が増えても共済契約は継続可能です。また、国民年金基金に加入していても、加入することが可能です。
  • 加入資格がない例
  1. 配偶者等の家族専従者、従業員
  2. 直接営利を目的とした企業活動を行っていない団体の役員等協同組合等の役員、医療法人の役員、学校法人の役員、宗教法人の役員、社会福祉法人の役員等
  3. 生命保険外交員など

(3)掛金

毎月の掛金は、1,000円から70,000円まで、500円きざみで設定することが可能です。

(4)控除対象額

掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除として、所得控除することが可能です。
(1年以内の前納掛金も同様に控除可能です。)

(5)受取時の課税方法

共済金の受取方法は、一時払い、分割払い、または一時払いと分割払い払いの併用を選択することが可能。一時払いについては退職所得、分割払いについては公的年金等の雑所得として課税されます。

(6)具体的メリット

試算条件
掛金月額 70,000円
納付月数 241ヶ月
課税所得金額 10,000,000円
税額比較
税額 所得税 住民税
加入前 1,764,000円 1,004,000円 2,768,000円
加入後 1,486,800円 920,000円 2,406,800円

節税額 361,200円

確定拠出年金の活用

個人事業者は、個人型確定拠出年金に加入し掛金を拠出することにより、年間最高816,000円(月額最高68,000円)の小規模企業共済等掛金控除を受けることができ、所得税・住民税を軽減できます。

(1)個人型確定拠出年金とは

確定拠出年金は、拠出された掛け金が個人ごとに明確に区分され、掛金を加入者自身が運用することによりその運用収益と掛金合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度です。

(2)加入対象者及び拠出限度額

申込窓口 加入の申込手続は金融機関を窓口にして行い、金融機関経由で国民年金基金連合会へ申込みます。
※加入に必要な書類は、各受付金融機関にあります。
実施主体 国民年金基金
加入できる者
  1. 自営業者(農業者年金の被保険者の方、国民年金を免除されている方を除く)
  2. 企業型年金加入者、厚生年金基金等の加入員等の対象となっていない企業の従業員
    (国民年金第2号被保険者)
掛金の拠出 加入者個人が拠出(企業の拠出はできない)
拠出限度額
  1. 自営業者
    68,000円(月額)
    ※国民年金基金の限度額と枠を共有
  2. 企業型年金や厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合
    18,000円(月額)

(3)税制

掛金拠出時 支払われた掛金については全額小規模企業共済等掛金控除の対象となる。
受給時
  1. 老齢給付金
    年金 ~公的年金等控除
    一時金~退職所得として課税
  2. 障害給付金
    ~非課税
  3. 死亡一時金
    みなし相続財産として相続税が課税

(4)注意点・デメリット

注意点
  • 国民年金を納めていない場合には、加入できない。
  • 国民年金基金の加入状況により、確定拠出年金に拠出できる金額が異なる。
デメリット
  • 投資リスクを各加入者が負うことになる。
  • 老後に受取る年金額が事前に確定しない。
  • 運用するために一定の知識が必要。
  • 原則60歳までに途中引き出しができない。
  • 勤続期間が3年未満の場合には、資産の持ち運びができない可能性がある。

個人年金保険で積み立てて節税

個人年金保険の種類

生命保険には、死亡等に備える一般的な生命保険のほかに個人年金保険というものがあります。個人年金保険は将来、年金方式で保険金を受け取れるというもので、毎月の一定額の積み立てを行います。所得税においては、通常の生命保険料控除とは別枠で、個人年金保険料控除があります。
所得控除用いた節税の観点からは、個人年金保険の加入も有効な方法です。

(1)有期年金保険

  1. あらかじめ定めた年金受取期間のうち、被保険者が生存している期間のみ年金が支払われ、被保険者が死亡した時点で年金は終了。
  2. 保証期間付有期年金では、保証期間内に被保険者が死亡した場合は、保証期間のうち残存期間の年金またはその時点の年金現価相当額の死亡一時金が遺族に支払われる。

(2)確定年金保険

  1. 被保険者の生死に関係なく、あらかじめ定めた期間にわたり年金が支払われる。
    (死亡後も年金額は変わらない)
  2. 年金受取期間中に被保険者が死亡した場合は、残存期間の年金またはその時点の年金現価相当額の死亡一時金が遺族に支払われる。

(3)終身年金保険

  1. 被保険者が生存している限り、一生涯年金が支払われ、被保険者が死亡した時点で年金は終了。
  2. 保証期間付終身年金では、保証期間内に被保険者が死亡した場合は保証期間のうち残存期間の年金またはその時点の年金現価相当額の死亡一時金が遺族に支払われる。

(4)変額年金保険

  1. 株式や債券を中心に、特別勘定で運用され、運用実績に応じて受取年金が変動する(受取年金額を最低保証している保険会社もある)
  2. 年金開始前に被保険者が死亡した場合は、一般的に払込保険料程度を最低保証とする死亡給付金が支払われる。

個人年金保険料控除対象契約

(A、Bを夫婦とする)

契約者 被保険者 受取人
A A A
A B B
  1. 年金受取人が契約者またはその配偶者であること。
  2. 被保険者と年金受取人が同一であること。
  3. 保険料払込期間が10年以上。
  4. 確定年金、有期年金は、年金支払開始日時点の被保険者の年齢が60歳以上で、年金支払期間が10年以上。
    (終身年金は支給開始年齢を問わない)

以上の条件の1つでも満たさない場合で、個人年金保険料控除の対象とならず、一般生命保険料控除の要件を満たす場合、一般の生命保険料控除の対象となる。

個人年金保険料控除の対象とならない例

  1. 夫(妻)が契約者かつ年金受取人、妻(夫)が被保険者である場合
  2. 個人年金保険料を一時払いしている場合
  3. 確定年金を50歳や55歳から受取る場合
  4. 変額年金保険の保険料

個人年金保険料控除額

個人年金保険料 控除額
1.2万5,000円までの場合 その全額
2.2万5,000円を超え5万円までの場合 保険料×1/2+1万2,500円
3.5万円を超え10万円までの場合 保険料×1/4+2万5,000円

受取時の税金

契約者 受取人 課税
A A
  • 受取時
  • 雑所得
    一括受取りは一時所得
A B
  • 受取開始時
  • 年金受給権が贈与税
  • 受取時
  • 雑所得(一括受取りは一時所得)
  • 保険料払込中に受取人名義を変更しても、その時点での課税はありません。

事業所得が赤字でも節税できる

事業主でも扶養親族になることができる

個人事業主が赤字になり、合計所得金額が38万円以下になった場合で、配偶者に所得がある場合には、事業主を配偶者として配偶者控除を受けることにより、配偶者の所得税・住民税の軽減することができます。

また、事業主の両親の扶養に入ることにより、両親が扶養控除を受け、両親の所得税・住民税を軽減することができます。

(1)配偶者控除概要

  1. 配偶者の合計所得金額が38万円(給与収入では103万円)以下の場合に適用できる。
  2. 控除額は、原則38万円(70歳以上の配偶者である場合は48万円)
  3. 同居特別障害者の場合、上記の額に一定額が加算される。

(2)扶養控除概要

  1. 配偶者以外の生計を一にする扶養親族の合計所得金額が38万円以下の場合に適用できる。
  2. 控除額
一般の扶養親族 0~15歳、23歳~69歳以下 38万円
特定扶養親族 16~22歳 63万円
老人扶養親族 70歳以上で同居老親以外 48万円
同居扶養親族 70歳以上で本人または配偶者の親で同居

(3)配偶者控除・扶養控除関係の節税事例

  • 事業主の合計所得金額が38万円以下となった場合に、配偶者の控除対象配偶者となる。
  • 事業主の合計所得金額が38万円以下となった場合に、他の生計一親族(親・子ども)の扶養親族となる。
  • 事業主の税率と配偶者の税率を比較検討して、配偶者の税率が高くなりそうなので、例年、事業主の扶養としていた2人の子どもを配偶者の扶養とした(または、1人は事業主、もう1人は配偶者の扶養とした)。
  • 例年、事業主が負担していた子どもの国民年金について、今年の所得が少ないと見込まれるので、配偶者が負担した場合には、配偶者の社会保険料控除の対象とできる。

保証債務の返済は
不動産の売却を

保証債務の返済は不動産の売却を

事業を営んでいると、借入金の保証人を頼まれることがあります。保証人になるのは誰でもいやなものであり、できればなりたくないのが本音ですが、それが大事な取引先だったりすると、なかなか断れず、やむを得ず保証人となってしまうことがあります。
結果として無事に返済が終わり何事も無く終了した場合には、相手から感謝されて終わりとなりますが、もし、返済不能となった場合には代わりに返済をすることとなります。代わりに返済した場合には、債務保証を行った者に対し、求償権が発生しますが、多くの場合にはその一部又は全部が回収不能となります。
お金が潤沢にあれば別ですが、無い場合には自分の資産を処分して返済することとなります。
ところで、資産を譲渡して譲渡益が出た場合には所得税が課せられます。そうなりますと、他人の借入金を返済するために譲渡した資産について、譲渡益に税金が課されることは、債務保証をした方にとってはあまりに酷ということで、一定の条件の下に救済措置が取られています。

保証債務を履行するために資産を譲渡した場合において、その履行に伴う求償権の一部又は全部を行使することができなくなった場合には、次の金額のうち最も低い金額について譲渡所得の金額が無かったものとされます。

  1. 回収不能額
  2. 回収不能額控除前の各種所得の金額の合計額
  3. その資産の譲渡に係る譲渡所得の金額

値下がりした
ゴルフ会員権を売却する

ゴルフ会員権の売却損は損益通算できる

ゴルフ会員権の売却損については、他の所得と損益通算することができます。
ゴルフ会員権に形態には、①株主会員制、②社団法人側、③預託金制の3種類がありますが、いずれの売却損でも損益通算できます。

ゴルフ会員権の売却損の計算方法

売却損=売却収入―(取得費+譲渡費用)

  • 売却収入とはゴルフ会員権の売却代金
  • 取得費はゴルフ会員権の購入価格、購入手数料、名義書換料などの合計額
    取得費が不明な場合は売却収入の5%とすることができる
  • 譲渡費用の主なものは売却手数料

ゴルフクラブが倒産したら損をするだけ

会員になっているゴルフクラブが倒産して、会員権が紙くず同然になっても、その損は売却損ではないので、他の所得と損益通算することは出来ません。また、災害や盗難による損失でもないので、雑損控除を受けることも出来ません。
したがって、危ないゴルフ会員権を持っている人は、早めに売却して損益通算による節税を検討しましょう。

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