不動産を活用した節税対策④

居住用不動産の買換え特例の活用

1.「特定の居住用不動産の買換え特例」とは

(1)制度の概要

特定のマイホーム(10年超所有している居住用財産)を代わりのマイホームに買い換えたとき、譲渡価格≦買換資産購入価格の場合、譲渡に対する税金を将来に繰り延べることができ、また、譲渡価格>買換資産購入価格の場合、その超える部分にのみ課税され、譲渡益と課税額の差額については将来に繰り延べられるという特例です。(譲渡益が非課税となるわけではありません)これを、居住用財産の買換えの特例といいます。
注意すべきは、この制度が税金の免除ではなく、譲渡に対する課税の先送りであることです。
つまり、買換え特例を適用した場合、その後買い換えたマイホームを譲渡する場合には、今回繰り延べた所得に対する分まで課税されるということになります。従って、この制度を利用する場合には、将来の計画などを踏まえて、適用の是非を検討しなければなりません。

(2)特例を受けるための適用要件

売却する自宅・新たに購入するマイホームの両方とも、下記の要件を満たす必要があります。

  1. 売却した年の1月1日において、その家屋や敷地の所有期間が共に10年を超えていること
  2. 譲渡日までに10年以上居住していること
  3. 新しく購入する家屋は土地500㎡以下、建物50㎡以上であること
  4. 新しく購入する家屋は建築後25年以内であり、耐火建築物又は耐震基準を満たしている建物であること
  5. 新しく購入する家屋は平成19年1月1日から平成21年12月31日までに取得し、居住の用に供すること

(3)特例の適用を受けるための注意点

特例の適用を受けるにあたり、上記の要件と合わせて、下記の点について確認を行う必要があります。

  1. 売却する相手先が、配偶者、直系血族、生計を一にする親族、同族会社、その他特殊な関係者でないこと
  2. その居住用財産の売却に際して、他の課税の特例の適用を受けていないこと
  3. その居住用財産を売却した年分に、住宅ローン控除の適用を受けていないこと
  4. 3年以内に居住用財産の課税の特例の適用を受けていないこと(特例の適用は3年に1度)
  5. マイホームを買換えする場合でも譲渡所得が3,000万円以下であれば、前述の「3,000万円特別控除の特例」を利用したほうが、後々の課税の繰り延べなどがないため有利となる場合もあるため、どの特例を選択するかについては、適用要件や再度買換える時期など個別の事情も考慮して、慎重に検討する必要がある

(4)適用を受けるための必要な手続

この特例を受けるためには、次の書類を添えて確定申告をすることが必要です。

  1. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  2. 売った資産の登記事項証明書
  3. 買い換えた資産の登記事項証明書、耐震基準適合証明書など
  4. 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた住民票の写し(売った日から2か月を経過した日以後に交付を受けたもの)又は戸籍の附票の写し等で、売った資産における居住期間が10年以上であることを明らかにするもの
  5. 買い換えた資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた住民票の写し

(5)実例による間違えやすいポイント

甲は15年前に店舗併用住宅を取得し、その1/2を居住用、残り1/2を事業用として利用していましたが、6年前に事業を廃止し、その後は建物全体を居住の用に供していました。この建物をその敷地とともに譲渡しましたが、建物と敷地の全体について特定の居住用財産の買換えの特例の適用を受けることは可能でしょうか。

例
解答

建物と敷地の全体について買換え特例の適用を受けることができます。
居住の用に供している期間は、当初店舗として使用していた部分については6年となるため、該当しないのではないかという疑問が生じますが、その家屋を10年以上所有し、その場所に10年以上居住しており、かつ、譲渡時に家屋全てが居住の用に供されているならば、当該家屋の全部が特例の対象となります。
逆に、現時点においても店舗と居住部分に分かれている場合は、居住部分のみ特例の適用を受けることができます。

固定資産の交換特例

1.交換特例とは

税法上、圧縮記帳の対象となる土地の範囲には、土地のほか、建物又は構築物の所有を目的とする地上権及び賃借権(借地権)が含まれています。

借地権者が地主に借地権を返還し、その対価として地主から当該借地権に係る土地の一部を取得した場合には、借地権のうち取得した土地に係る部分以外の部分と、当該取得した土地のうち底地部分とを交換したものとして法人税法第50条の規定を適用することができます。
したがって、照会の場合は、照会に係る借地権及び底地の評価額が適正であると認められる限り、同条により圧縮記帳することができます。

(1)制度の概要

下記の要件を満たす固定資産の交換をした場合には、その担税力を考慮して一定の算式により計算した金額を圧縮記帳により損金の額に算入することができます。

交換特例の要件(法法50)
  1. 相互に1年以上所有している資産であること
  2. 交換譲渡資産および交換取得資産がともに固定資産であること
  3. 同一種類の資産の交換であること
  4. 交換取得資産は交換譲渡資産と同一の用途の供すること
  5. 交換差金等の金額が交換資産のいずれか高い方の時価の20%以下であること
  6. 交換のために取得した資産でないこと

他方、税務上の交換特例の適用を受けずに譲渡益をそのまま計上することも可能です。したがって、固定資産を交換した場合には交換特例の適用を受けるか否か選択できます。

(2)選択の留意点

上記の交換の要件を満たし、交換の圧縮記帳の適用を受けようとする場合には、法人税の確定申告書提出期限までにその選択が求められます。
交換特例の適用をする場合としない場合の相違点をまとめると以下のようになります。

主な相違点
項目 交換特例を適用 交換特例を非適用
交換譲渡益に対する課税 交換差金の範囲内で圧縮記帳が認められる(課税の繰延べ) 通常の所得課税30%
(中小法人軽減税率22%)
なお、土地重課税は現在停止中
交換取得資産の価額 原則として交換譲渡資産の簿価 購入価額+購入に要した付随費用
減価償却 圧縮後の帳簿価額をベースに計算
(償却費⇒少)
償却費⇒大
交換後譲渡した場合 相当の期間が経過する前に譲渡した場合には「同一の用途に供する」要件に抵触し、交換特例が否認される可能性有 通常の譲渡益に対する課税

上記を考慮したうえで、注意点をまとめると以下のことが言えます。

  1. 譲渡益に対する税負担の軽減を図る必要がある場合には、交換特例の選択が有利となる。ただし、将来も含め、税務上の要件を満たすか否かの検討が必要で、交換後に交換取得資産の売却や同一の用途に供されない等の特殊事情が見込まれる場合は、申告後に交換特例が受けられなくなる可能性があることに注意が必要である。
  2. 繰越欠損金で譲渡益が吸収できる場合で、将来の譲渡時の税金を軽減したいケースや将来の減価償却費を確保したいケースについては、あえて交換特例を適用しないという選択も考えられます。

立体買換えで遊休土地を活性化

1.立体買換えとは

個人が三大都市園の既成市街地等(これに準ずる一定の区域を含む)内にある土地等、建物または構築物を譲渡し、一定期間内に、その土地等または建物等の敷地の上に建築された地上階数3以上の中高層の耐火共同住宅を取得して、かつその取得後1年以内に自己の居住の用または事業(貸家)に供した場合、譲渡収入のうち取得資産の取得価額に対応する部分は取得価額の引継ぎによる課税の繰り延べが認められます。等価交換方式で最も一般的に利用されています。

また、既成市街地等、一定の再開発事業の促進地区等内にある土地等、建物または構築物を、都道府県知事の認定を受けた特定民間再開発事業の用に供するために譲渡する場合も、同様に課税の繰り延べが認められます。
この場合は譲渡敷地と同一敷地に建築される建物は地上階数4以上で、用途制限がないこと、法人も適用できることが立体買換え特例と異なっています。

(1)立体買換えの特例の要件

東京・名古屋・大阪の三大都市圏の立体買換え特例対象地域に個人が所有している土地に次のような建物を建て、買替を行いますと、譲渡税は課税繰り延べされ、実質的に課税されないこととなります。
ただし、交換に伴って現金の授受(交換差金)があったり、別の土地との交換を絡ませたときには、その部分に対して課税されます。

  1. 地上3階建て以上
  2. 耐火構造または準耐火構造
  3. 床面積の2分の1以上が居住用(賃貸マンション含む)であること
  4. 交換で取得した後は、1年以内に居住用(マイホーム)または事業用に使うこと
3大都市圏の立体買換えの特例対象地域
首都圏 東京都 八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、西東京市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、青梅市、羽村市
神奈川県 横浜市、川崎市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、子市、相模原市、大和市、海老名市、座間市、厚木市、綾瀬市
埼玉県 川口市、さいたま市、所沢市、春日部市、上尾市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、鳩ヶ谷市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、富士見市、八潮市、三郷市
千葉県 千葉市、市川市、船橋市、松戸市、習志野市、柏市、流山市、八千代市、我孫子市、鎌ヶ谷市、浦安市、野田市、佐倉市、四街道市
近畿圏 京都府 京都市、宇治市、向日市、長岡京市、八幡市
大阪府 大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、守口市、枚方市、茨木市、八尾市、寝屋川市、松原市、大東市、箕面市、柏原市、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、東大阪市、四條畷市、交野市、貝塚市、泉佐野市、富田林市、河内長野市、和泉市、大阪狭山市
兵庫県 神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市
中部圏 愛知県 名古屋市、春日井市、小牧市、尾張旭市、豊明市

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